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「遺言」とは、財産や身分に関して、遺言者の死後に法的な効力が出るように残す言葉を言い、それを書面化したものが「遺言書」です。
遺言書がないとこんな事態に!
「遺言は、自分には必要ない。」「遺言が必要なのはお金持ちだけで、庶民には関係ない。」等とお考えの方はいませんか?
実はそんなことはありません。
ⅰ遺産分割成立まで何年もかかることも!
亡くなった方が、遺言書を作成していなかった場合には、遺産分割のため法定相続人間で話し合い(遺産分割協議)が必要となります。
遺産分割協議がまとまれば良いのですが、まとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立て、裁判所の関与のもとに話し合いを行います。調停が成立しなかった場合は家庭裁判所での審判となり、裁判官が法定相続分を基準として妥当な分割方法を決定します。
遺言書がない場合、このような手続きが行われるため、遺産分割が終了するまでに何年もかかる可能性があります。
ⅱ財産の処分が困難に!
遺産分割が終了するまでの間、相続財産は、相続人全員で共有することになりますので、相続人単独では相続財産を処分することが出来ません。
相続税の申告及び納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内であり、無申告加算税や延滞税を避けるためには、遺産分割が終了していなくても納税する必要があります。遺産分割に反対したり、音信不通の相続人がいたりすると、遺産分割が成立しませんが、遺産分割が終了していないと、その期間内に相続財産を処分して相続税を納めることが困難になってしまいます。
しかし、遺言書があれば、遺言書に従って速やかに財産を取得でき、それに従って財産を処分することが可能となります。残された家族にとって遺言書の存在はありがたいものとなります。
ⅲ法定相続分による遺産分割がもたらす悲劇!
遺言書がない場合、財産を渡そうと思っていなかった遺族に財産が渡ってしまったり、財産を渡したい者が財産を取得できない可能性が出てきます。
例えば、配偶者に全財産を渡そうと思っていたとしても、他に疎遠となっている相続人がいる場合、法定相続分に従って遺産分割が行われる結果、配偶者が全ての財産を相続することが困難になります。
場合によっては、配偶者が長年住んでいる自宅を売却する事態も生じかねません。
相続人が兄弟姉妹の場合、遺留分がないので、遺言によって兄弟姉妹を完全に排除できますが、遺言がない場合、相続人間で遺産分割協議をせざるを得ない状況です。
遺言の種類
遺言書には、いくつかの作り方の方式がありますが、代表的な二つの方式について比較いたします。遺言の勧め
遺言は次のようなことをお考えの方に特にお勧めです。成年後見とは
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害等により判断能力が不十分となった方のために、法律面や生活面を支援する制度です。
成年後見人は、法定代理人として、本人のために本人に代わって「財産管理」「身上保護(身上監護)」を行います。
具体的には、お金の管理、施設との契約、不動産の契約、年金手続き等を行います。
本人支援のため、関係機関と連携してサポートします。
法定後見制度と任意後見制度
成年後見制度には、法定後見人制度と任意後見制度があります。
法定後見制度は、判断能力が既に低下してしまっている場合に利用する制度です。
これに対して、任意後見制度は、元気な人が将来の判断能力低下時に備える制度です。
契約で後見人候補者を決めるので、自分が信頼できる(任意の)人に後見人を頼むことが出来ます。
法定後見制度の3つの類型
ア 成年後見
物事を判断する能力が全くない方が利用します。
(どこにいるのかわからない、家族・知人の判別が困難等)
日用品の購入以外のほとんどの法律行為(売買契約、遺産分割等)については、成年後見人が代理します。
イ 保佐
物事を判別する能力が著しく不十分な方が利用します。
(自分の財産の把握できていない、買い物をしてもお金の管理ができない等)
重要な法律行為(売買契約、遺産分割等)に同意権が付与されます。
本人が了承することにより、代理権を付与したり、同意権の範囲を拡張したりすることが出来ます。
ウ 補助
物事を判断する能力が不十分な方が利用します。
本人が了承することにより、必要な行為につき、代理権や同意権が付与されます。
※代理権は、本人に代わって契約等の法律行為を行うことができる権限です。
※同意権は、本人が行った契約等の法律行為に同意することにより、契約が完全に有効となる権限です。同意がない契約等の法律行為は、本人保護のために取り消すことが出来ます。
法定後見制度の3種類
※1 民法13条1項に掲げられている借金、訴訟行為、相続の承認や放棄、新築や増改築などの事項をいいます。ただし、日用品の購入など日常生活に関する行為は除かれます。
※2 本人が特定の行為を行う際に、その内容が本人に不利益でないか検討して、問題がない場合に同意(了承)する権限です。保佐人、補助人は、この同意がない本人の行為を取り消すことができます。
※3 民法13条1項に挙げられている同意を要する行為に限定されません。
既に認知症になった親がいて金融機関・介護施設等から後見人の選任を求められている、将来の認知症に備えて信頼できる人に後見人をお願いしたい等のお悩みをお持ちの方がいらっしゃれば是非お問い合わせください。
民事信託とは
最近相続関連のご相談を受ける際に、「家族信託」「民事信託」のご提案をすることが増えております。
※信託銀行の「遺言信託サービス」は、いわば「遺言“書”信託」であり、「遺言書作成+保管+遺言執行」のサービスの俗称です。
「信託」=「信託銀行の業務」ではありませんので、ご誤解ないようにお願い致します。
「民事信託」とは、信託業の免許を持たない受託者に任せる信託の俗称です。
「家族信託」とは、民事信託の中でも、家族、親族を受託者として託す仕組みの俗称です。つまり、“家族の家族による家族のための財産管理の仕組み”です。
従来の商事信託とは異なり、家族を受託者(信託事務を担い、財産の管理処分をする者)として、自由な制度設計をすることが出来ることに特徴があります。
「民事(家族)信託」は、成年後見制度、遺言制度等の各種の制度の「隙間を埋める制度」でもあります。
例えば、アパートオーナーが何も対策を打たないまま、判断能力を喪失してしまった場合、どうなるのでしょうか?
次のようなことが、オーナー本人、そのご家族の自由な意思によって出来なくなってしまいます。
入居者との賃貸借契約、資産の組み替え、リニューアル工事、原状回復工事、アパートを担保とした借り入れ等。
これらの状況に応じた迅速かつ的確な賃貸物件の管理が出来ないと、賃借人は不安を感じて入居率が低下し、賃貸物件の資産価値が大きく低下してしまいます。
そういう場合に備えて、「成年後見制度」があります。
この制度を活用する場合、「本人の保護」のための財産管理は後見人によって行われるため、「相続対策」等、本人以外のご家族のための支出は出来なくなります。
相続対策のための資産の組み替え等は出来ません。
また、成年後見人の選任には、家庭裁判所の手続きに数ヶ月必要なため、その間賃貸物件の管理が凍結してしまいます。
賃借人への迅速かつ的確な対応が出来ません。
さらに、一定以上の財産を有する方の案件では、後見人に第三者専門職(司法書士、弁護士等)が選任される可能性が高まります。
オーナー、そのご家族による財産管理は出来なくなります。
オーナー本人が亡くなるまで、第三者専門職による財産管理が続き、第三者専門職には毎月の報酬を支払うことになります。
判断能力を喪失する前に対策することで、判断能力を喪失した後でも、財産管理、資産の組み替え等が出来る方法があります。
それが、「家族信託」「民事信託」という制度です。
「判断能力を喪失する場合に備えた保険」というイメージです。
将来のためにどのような備えをするかは人それぞれだと思います。
「成年後見制度」では物足りないと感じているオーナー本人、そのご家族がいらっしゃれば、オーナー本人、そのご家族による財産管理が可能となる「家族信託」「民事信託」制度の活用をご検討ください。