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商業法人登記の改正を振り返る その4

脱印鑑の流れを受けた印鑑の整理について

 

【背景】

 

コロナ渦において、株主総会や取締役会等のWEB会議が急速に普及するに伴い、議事録等についても電子化促進の要請が強まり、このような流れを受けて、令和2年6月15日から法務省が緩和の措置をとり、また、令和3年2月15日に商業登記規則等の一部を改正する省令が施行されました

 

以下のどのような改正があったかについて整理したいと思います。

 

 

令和2年6月15日からの改正】

商業登記規則102条5項2号に掲げる電子証明書のうち同条4項2号の電子証明書(法務大臣の定めるもの)により、リモート型署名やクラウド型署名を利用できるようになりました。

 

使用できる電子証明書については、法務省のHPを要確認!

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji60.html#05

 

 

令和3年2月15日からの改正】

 

①印鑑証明書の提出の任意化について

商業登記法第20条を削除し、一律印鑑の提出を求める措置を廃止しました。

令和3年2月15日から、登記の申請をオンラインで行う場合は、登記所への印鑑の提出が任意になります。

なお、登記の申請を書面で行う場合は、従前同様、申請書に登記所に提出している印鑑を押印する必要があるため、従来どおり印鑑を提出していただく必要があります。

 

②オンラインによる印鑑の提出及び商業登記電子証明書の請求について

令和3年2月15日から、印鑑の提出及び廃止の届出や商業登記電子証明書の請求を、オンラインで行えるようになります。

なお、オンラインによる印鑑の提出及び廃止の届出は、オンラインによる登記の申請と同時に行う場合にのみ可能です。印鑑の提出及び廃止の届出のみを単独で行うことはできませんので、ご注意ください。

 

③押印規定の見直し

法令で押印を要する書面、印鑑証明書の添付を要する書面については、押印を存続しました。

それ以外の書面については、基本的に押印の有無について審査しません。

 

もっとも、商業登記申請に関する添付書類を電磁的記録で作成してオンライン申請により送信する場合には、当該書面に代わるべき情報にその作成者が電子署名をし、電子証明書とともに送信しなければなりませんので、ご注意ください(商業登記規則102条2項、5項)。

 

④利用可能な電子証明書の拡大について

令和3年2月15日から、登記の申請や印鑑証明書の請求を行う際に、商業登記電子証明書だけでなく、マイナンバーカードに格納した公的個人認証サービスの電子証明書なども使用することができるようになりました。

 

具体例

 

⑴委任状

電子委任状には、代表者の電子証明書が必要です。

商業登記電子証明書に限られませんが、リモート型署名やクラウド型署名を利用することは利用できません。

商業登記電子証明書又は公的個人認証サービスの電子証明書が利用されることが多いです。

 

⑵株主総会議事録

株主総会議事録を電磁的記録として作成する場合も、登記申請書の添付書面情報として使用しない場合には、作成者等の電子証明書は不要ですが、添付情報として利用する場合には、電子署名が必要となります。

ⅰ代表者を選定する議案がない場合

株主総会議事録に付する作成者の電子署名の電子証明書について、リモート型署名やクラウド型署名を利用することができます。

ⅱ代表者を選定する議案がある場合

ア従前の代表者の商業登記電子証明書又は公的個人認証サービスの電子証明書による署名がある場合、他の取締役が電子署名する場合には、リモート型署名やクラウド型署名を利用することができます。

イ従前の代表者の商業登記電子証明書又は公的個人認証サービスの電子証明書による署名がない場合、議長及び出席した取締役の電子署名は、公的個人認証サービスの電子証明書が利用されます。

リモート型署名やクラウド型署名を利用することは利用できません。

 

⑶取締役会議事録

取締役会議事録を電磁的記録として作成する場合、出席した取締役及び監査役の電子署名が必要となります。

登記申請書の添付書類として利用する場合には、代表者を選定する議案がない場合とある場合で分けて検討する必要があります。

株主議事録の場合分けをご参照ください。