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商業法人登記の改正を振り返る その3

外国人・海外居住者の方の商業法人登記について

 

背景

外国企業の日本への投資活動や事業展開に関して、煩雑さが指摘されている規制、行政手続きの見直しについて議論を行い、各省庁等において実施することとした取組がまとめられ、これらについての法人設立、登記関係について近時数多くの通達が出されました。

 

1.会社の代表取締役の居住地について ※緩和

 

内国会社の代表取締役のうち、最低1人は日本に住所を有していなければならないという従前の取扱いは廃止され、代表取締役の全員が日本に住所を有しない内国株式会社の設立の登記及びその代表取締役の重任若しくは就任の登記について、申請を受理する取扱いとなりました。

そのため、代表取締役の全員が海外に居住していても、日本において会社の設立登記を申請することができます(日本人であることも必要ありません

 

外国会社の日本における代表者については、引き続き少なくても1名は日本に住所を有する必要がありますので、ご注意ください(会社法第817条)。

 

2.出資の払込みを証する書面について

 

①払込取扱機関について ※再確認

 

「払込取扱機関」は、内国銀行の日本国内本支店だけでなく、外国銀行の日本国内支店(内閣総理大臣の認可を受けて設置された銀行)も含まれます。

また、内国銀行の海外支店も「払込取扱機関」に含まれることが再確認されましたこのような支店かどうかは、銀行の登記事項証明書等により確認可能です。

ちなみに、外国法に基づき設立されたいわゆる現地法人は、内国銀行の海外支店ではなく、「払込取扱機関」に含まれませんので、ご注意ください。

 

②預金通帳の名義人について ※緩和

 

株式会社の発起設立の登記申請書に添付すべき払い込みがあったことを証する書面の一部として、払込取扱機関における口座の預金通帳の写しを添付する場合における当該預金通帳の口座名義人の範囲について、発起人のほか、設立時取締役でもよい(設立時代表取締役であるものを含む)とされました。

 

ちなみに、設立時取締役が預金通帳の口座名義人になる場合において、払込みがあったことを証する書面として預金通帳の写しを添付するときは、「発起人が設立時取締役に対して払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面(委任状)」を併せて添付する必要があります。

 

もっとも、発起人及び設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合には特例があり、発起人及び設立時取締役以外の者(自然人に限られず、法人も含みます。以下「第三者」といいます。)であっても、預金通帳の口座名義人として認められます。

 

この際に、払込みがあったことを証する書面として、第三者が口座名義人である預金通帳の写しを添付する場合には、「発起人が第三者に対して払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面(委任状)」を併せて添付する必要があります。

 

※発起人からの「払込金の受領権限の委任」は、発起人のうち1人からの委任があれば足りるものとされていますので、発起人全員又は発起人の過半数で決する必要はありません。

 

3.署名証明書について ※緩和

 

商業法人登記の申請書に添付する外国人の署名証明書(署名が本人のものであることについて本国官憲が作成した証明書)については当該外国人が居住する国等に所在する当該外国人の本国官憲が作成したものでも差し支えないこととされました。

 

従来より、本国に所在する本国官憲作成の署名証明書、本国に所在する公証人作成の署名証明書及び日本に所在する本国官憲作成の署名証明書について、認められていました。

今回は、第三国に所在する本国官憲作成の署名証明書について認められました。

 

ちなみに、本国官憲の署名証明書を取得できないやむを得ない事情がある場合には、以下の署名証明書の添付が許容される場合があります(登記申請書に押印すべき者の作成した上申書も必要です。)。

 

居住国官憲が作成した署名証明書

居住国の公証人が作成した署名証明書

日本の公証人が作成した署名証明書

 

※それぞれの場合に添付する上申書に内容については、依命通達の内容をご参照ください。

 

4.外国語で作成された添付書面の翻訳について ※緩和

 

商業登記の申請書に、外国語で作成された書面を添付する場合には、原則として、その全てについて日本語の訳文も併せて添付する必要があります。

 

ただし、一定の場合には、翻訳を一部省略することが可能です。

 

例えば、外国会社の株主総会議事録や取締役会議事録(外国会社の本国の管轄官庁又は日本における領事その他権限がある官憲の認証を受けたもの)を添付する場合、日本における営業所又は日本における代表者の登記とは関連しない内容については、翻訳を省略して差し支えないとされました。

 

5.契印の方法について ※緩和

 

会社法の規定に基づく外国会社としての登記をしていない外国会社や、印鑑を押印することのできない外国人が、登記申請書の添付書面に契印する場合には、契印の代わりに、以下のいずれかの方法で署名をすることができます。

 

①各ページごとのつづり目に署名(いわゆる割サイン)をする。

②各ページの余白部分に署名をする。

③各ページの余白部分にイニシャルを自書する。

④袋とじの部分(表紙と裏表紙の両方)に署名をする。