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商業法人登記の改正を振り返る その2

平成28年10月1日より施行(施行日前に、株主総会が行われた場合であっても、施行日以降に登記申請をするときは、株主リストの添付が必要です。)

 

登記の真実性向上のための改正

 

株主リストの添付書面化についての改正

 

①制度導入の背景

 

近時、商業登記について、①株主総会の決議を仮装するなどした上で、実在しない者や他人の氏名を冒用して、役員変更登記を行うなどして、不正に株式会社を取得して犯罪や違法行為が行われた事案や、②活動実体の伴わない株式会社につき、株主総会の決議を仮装するなどした上で、不正に会社分割を行ったように仮装して株式会社を設立し、当該株式会社を悪用して犯罪や違法行為が行われた事案等の発生を受け、法人格を悪用した犯罪行為や違法行為を抑止するために、消費者委員会から商業登記の真実性の担保を図る必要がある旨の建議がされ、報道等においても、同様の指摘がなされていました。

 

このような情勢を踏まえ、平成27年2月27日より

①取締役等(取締役、監査役及び執行役)の就任の登記に関する本人確認証明書の添付に関する改正

②代表取締役等(代表取締役又は代表執行役)の辞任の登記に関する捺印(「実印での押印及び印鑑証明書の提出」又は「当該代表取締役等が法務局に提出している会社の代表印での押印」)に関する改正

がされました。

 

もっとも、登記の真実性の確保の要請は、役員変更の場面に限定されるものではありません。

 

そこで、登記の真実性向上をさらに進めるため、登記すべき事項について株主総会の決議等を要する登記の申請について、当該決議等の帰趨を左右しうる主要な株主の氏名又は名称及び住所並びに各株主の有する株式数及び議決権数を記載した株主リストの添付を求めることとし、これにより、登記官において、当該登記の申請について、別に添付された株主総会議事録等と株主リストの記載内容を対比するなどして真に株主総会の決議等がされたかを確認できるようにしました。

 

 

②制度の概要

 

【株主リストが必要な場合】

1. 登記すべき事項につき株主総会の決議(種類株主総会の決議)を要する場合※1

2. 登記すべき事項につき株主全員の同意(種類株主全員の同意)を要する場合※2

※1 株式会社のほかに、投資法人、特定目的会社も社員のリストの提出が必要(その他の法人は不要)です。
※2 登記事項につき、株主総会決議を省略する場合(会社法319条1項)にも、株主リストの添付が必要です。

 

【登記すべき事項につき株主総会の決議(種類株主総会の決議)を要する場合】 ※1

①議決権数上位10名の株主 ※2

②議決権割合が2/3に達するまでの株主 ※3

・・・いずれか少ない方の株主について、次の事項を記載した株主リスト

(1)株主の氏名又は名称
(2)住所
(3)株式数(種類株式発行会社は、種類株式の種類及び数)
(4)議決権数
(5)議決権数割合

⇒これら5点を代表者が証明する

 

※1 登記すべき事項につき、種類株主総会の決議を要する場合には、当該種類株主についての株主リストが必要です。
※2 自己株式等の当該事項につき議決権を行使することができない株式を有する株主を除きますが、株主総会に欠席し、又は議決権を行使しなかった株主を含みます。
※3 2/3に達するまでの株主は、議決権割合の多い方から加算していく必要があります。

 

登記すべき事項につき株主全員の同意(種類株主全員の同意)を要する場合】 ※1

 

株主全員について次の事項を記載した株主リスト

(1)株主の氏名又は名称
(2)住所
(3)株式数(種類株式発行会社は、種類株式の種類及び数)
(4)議決権数

⇒これら4点を代表者が証明します。

 

※1 登記すべき事項につき、種類株主全員の同意を要する場合には、種類株主全員についての株主リストが必要です。

 

③注意事項

 

ⅰ株主総会時と登記申請時で会社の代表者が異なる場合は、登記申請時の代表者(新しい代表者)が株主リストを作成する必要があります。

 

ⅱ組織再編(会社の合併や分割など)の登記をする場合、株主リストを作成する会社の代表者は要注意です。

詳細については、下記ページをご参照ください

https://www.moj.go.jp/content/001214713.pdf

 

ⅲ株主名簿と株主リストでは記載内容(例えば、議決権数等)が異なっていますので、株主名簿の添付により、株主リストの添付を不要とすることはできません。

 

ⅳ 株主が外国人(又は外国の法人)で、その氏名及び住所等について、株主名簿上、外国人株主を外国文字の表記で把握している場合には、株主リストにも外国文字で記載すれば足ります。