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令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法⑬

 

【業務情報】

 

相続登記の義務化が、令和6年4月1日からスタートします。

不動産を取得した相続人に対して、その取得を知った日から3年の履行期間内に相続登記の申請をすることが義務付けられました(新法第76条の2)。

「正当な理由」がないのに、登記申請義務に違反した場合には、10万円以下の過料の適用対象となる旨、新不動産登記法では規定されております(新法第164条第1項)。

 

 

近時相続登記の義務化について通達が出ました。

 

過料事件の手続きについて詳細な記載があったので、そのあたりをまとめたいと思います。

 

なお、過料とは、法律秩序を維持するために、法令に違反した場合に制裁として科せられる行政上の秩序罰です(罰金のような刑事罰とは異なります)。

 

 

裁判所への通知(過料通知)

登記官は、登記申請義務に違反して過料に処せられるべき者があることを職務上知ったときは、登記申請義務に違反した者に対し相当な期間を定めてその申請をすべき旨を催告(申請の催告)し、それにもかかわらず、その期間内にその申請がされないときに限り、遅滞なく、管轄地方裁判所にその事件の通知(過料通知)をしなければなりません。

 

 

登記官が申請の催告を行う端緒

登記官は、次に掲げるいずれかの事由を端緒とし、登記申請義務に違反したと認められる者があることを職務上知ったときに限り、申請の催告を行うものとされます。

①相続人が遺言書を添付して遺言の内容に基づき特定の不動産の所有権移転登記を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権についても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき

②相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産の所有権移転登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨が記載されていたとき

 

資産価値が高い不動産のみ相続登記をして、資産価値が低い不動産の相続登記をしない方は、たまに見受けられます。

そういう方への抑止力になるのかなと思います。

 

 

以前書いたコラムでは、登記官が申請の催告を行う端緒について、あくまでも私見ということで以下のように記載しました。

 

「将来的には、登記官は住基ネットから死亡情報を取得できるようになりますので、このシステムを活用して義務違反を判断するかもしれません。

そうであれば、そのシステムの構築をするまでは、申告義務違反を把握できないので、相続登記の義務化に伴う過料手続きは基本的には科されないと思います。」

 

自分の想像よりもアナログな端緒でした。

 

 

登記官による正当な理由の確認

「正当な理由」の有無についての判断は、催告書において、「正当な理由」がある場合にはその具体的な事情を申告するように求めた上で、当該申告内容その他一切の事情を総合的に考慮して行います。

 

「正当な理由」があると考えられる具体例として、

①数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要する場合

②遺言の有効性や遺産の範囲等が争われている場合

③申請義務を負う相続人自身に重病等の事情がある場合

の3つは以前から挙げられていました。

 

それに加えて

④申請義務を負う者がDV被害者である場合

⑤申請義務を負う者が経済的に困窮して、登記申請費用を負担できない場合

の2つが具体例に追加されました。

 

もっとも、これらに該当しなくても、個別の事案における具体的な事情に応じ、申請をしないことについて理由があり、その理由に正当性が認められる場合には、「正当な理由」があると認めて差し支えないとされました。

 

 

【まとめ】

 

相続登記が義務化され、遅滞すると罰金が科せられるという情報がネットではあふれております。

間違っていませんが、正確でもないと思います。

 

新不動産登記が施行されて、相続登記を慌ててしなくても過料は科せられません。

もっとも、相続登記の重要性は改正前後で変わっておりません。

 

長期間これを放置しておくと相続人の数・範囲が広がり(場合によっては甥・姪まで)、 その後に遺産分割協議が困難になるなど、亡くなられた方の不動産の名義を変更したり、処分することが難しくなってしまう恐れがあります。

相続人間で疎遠となり、連絡を取っていないことも少なくなく、連絡が取れたとしても、法定相続分通り平等に分けて欲しいと主張され、遺産分割協議がまとまらないことも一定数あります。

 

相続登記が義務化されるか否かにかかわらず、相続登記を出来るだけ早めにするように心がけてください。