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令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法⑨

【業務情報】

 

相続登記の義務化が、令和6年4月1日からスタートします。

不動産を取得した相続人に対して、その取得を知った日から3年の履行期間内に相続登記の申請をすることが義務付けられました(新第76条の2)。

「正当な理由」がないのに、登記申請義務に違反した場合には、10万円以下の過料の適用対象となる旨、新不動産登記法では規定されております(新第164条第1項)。

 

なお、過料とは、法律秩序を維持するために、法令に違反した場合に制裁として科せられる行政上の秩序罰です(罰金のような刑事罰とは異なります)。

国が科する過料については、基本的に裁判所の過料手続きを経ます。

裁判所は、法務局からの通知で事実を把握します。

 

 

「正当な理由」の具体的な類型については、通達等であらかじめ明確化される予定です。

 

 

現時点で「正当な理由」があると考えられる例は、以下のとおりです。

①数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要する場合

②遺言の有効性や遺産の範囲等が争われている場合

③申請義務を負う相続人自身に重病等の事情がある場合

 

 

過料を科す際の具体的な手続きについても、事前に義務の履行を催告することとする等、公平性を確保する観点から、省令等に明確に規定される予定です。

ちなみに、履行期間経過後でも催告に応じて登記申請されれば、裁判所に過料通知はしない方向で考えているようです。

 

 

手続きのイメージですが、以下のとおりです。

 

①登記官が相続登記の申請義務違反を把握

※義務違反の事実の把握は今後の検討課題

②相続人に義務違反を催告

③ⅰ催告に応じて申請した場合

過料事件の通知はされない

 

③ⅰ正当な理由なく申請しなかった場合

過料事件の裁判所への通知→裁判所が要件審査をして、過料を科する旨の裁判をする

 

 

【相続登記義務化に関する私見】

 

ここからは、現時点の資料に基づく私見であり、将来的に違った運用になる可能性がありますので、お含みおきください。

 

 

①まず、登記官がいかに義務違反を把握するのかという疑問があります。

 

会社の登記の場合、登記義務が発生したにもかかわらず遅滞して登記すると、過料が科せられることがあります。

それと同様に、相続人が登記申請を実際にした場合、被相続人の死亡日と申請日との期間を見て、登記の懈怠を判断するのかなと考えておりました。

しかしながら、履行期間経過後でも催告に応じて登記申請されれば、裁判所に過料通知はしない方向で考えているようです。

とすると、会社の登記と同様に、単純な期間計算で過料が科されるか否か決定される訳ではなさそうです。

 

将来的には、登記官は住基ネットから死亡情報を取得できるようになりますので、このシステムを活用して義務違反を判断するかもしれません。

そうであれば、そのシステムの構築をするまでは、申告義務違反を把握できないので、相続登記の義務化に伴う過料手続きは基本的には科されないと思います。

 

②次に、履行期間経過後でも催告に応じて登記申請されれば、裁判所に過料通知はしない方向で考えているようですので、法務局からの通知を無視する等の事態がない限り過料が科されないと思います。

 

 

【まとめ】

 

相続登記が義務化され、遅滞すると罰金が科せられますという情報がネットではあふれております。

間違っていませんが、正確でもないと思います。

 

現時点でわかる範囲で情報をお伝えしました。

 

新不動産登記が施行されて、相続登記を慌ててしなくても過料は科せられません。

もっとも、相続登記の重要性は改正前後で変わっておりません。

 

長期間これを放置しておくと相続人の数・範囲が広がり(場合によっては甥・姪まで)、 その後に遺産分割協議が困難になるなど、亡くなられた方の不動産の名義を変更したり、処分することが難しくなってしまう恐れがあります。

相続人間で疎遠となり、連絡を取っていないことも少なくなく、連絡が取れたとしても、法定相続分通り平等に分けて欲しいと主張され、遺産分割協議がまとまらないことも一定数あります。

 

相続登記が義務化されるか否かにかかわらず、相続登記を出来るだけ早めにするように心がけてください。