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自筆証書遺言保管制度⑥

久しぶりに法務局における自筆証書遺言書保管制度について何回かに分けて書きたいと思います。

令和2年7月10日、法務局における遺言書の保管等に関する法律が施行され、法務局における自筆証書遺言に係る遺言書保管制度の運用がスタートしております。

東京法務局では、本局板橋出張所八王子支局府中支局西多摩支局において、自筆証書遺言の保管事務を取り扱っています。

皆様のお客様にも、自筆証書遺言の保管制度を既に利用されている方や、利用を検討されている方がいらっしゃると思います。

運用が開始されてしばらく経ち、実際に自筆証書遺言の保管事務を行う方から実務上の色々な事案について報告を受けたので、皆様に情報提供させていただきます。

 

今回は、「自筆証書遺言の保管申請に関する補正事例」についてご紹介いたします。

まず、保管の申請の流れについて触れたいと思います。
保管申請の流れは以下の通りです。

①自筆証書遺言に係る遺言書を作成する
②保管の申請をする法務局(遺言書保管所)を決める
③申請書を作成する
④保管の申請の予約をする
⑤保管の申請をする
⑥保管証を受け取る

 

次に、保管制度の対象は、民法第968条の自筆証書によってした遺言に係る遺言書のみであり、保管の申請に係る遺言書が同条の要件を満たさず、申請人が補正に応じない場合には、令第2条第2号において却下しなければならないと規定されています。

保管申請に添付される遺言について次のような補正事例があったようです。

①遺言書がパソコンで作成されており、自書でない事例や、本文は自書であっても、付言事項がパソコンで作成されている事例
※民法第968条第2項により自書することを要しないとされているのは、財産目録に限られます。

②自書によらない財産目録の毎葉に遺言者の署名、押印がない事例
※民法第968条第2項により、相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しません。
ただし、財産目録の毎葉に署名し、印を押さなければならないとされています。

③遺言書に余白がない、またはサイズが異なる用紙で作成されている事例
※作成された遺言書が、法務省令で定める様式となっておらず、用紙サイズがA4版ではなかったり、余白が不足していたりすることがあります。
また、ページの記載がないものや誤っているものもあります。

④遺言書の記載事項の変更方法が誤っている事例
※民法第968条第3項に定められた方法に従って変更されていないことがあります。
ⅰ変更場所の指示がない
ⅱ変更した旨の付記がなく、変更箇所に押印されているのみ
ⅲ遺言者の署名がない
ⅳ変更箇所への押印がない
ⅴ修正液や修正テープが使われている

⑤財産目録として添付された預貯金通帳等のコピーの文字が不鮮明で読み取りにくい事例

⑥カラーコピーした遺言書を保管申請している事例
※自筆証書遺言書の原本は、法務局で保管されるので、後日に遺言の内容を確認するため、あらかじめコピーを取っておく場合があり、このコピーと原本の取り違いによって発生するものと思われます。

⑦自書によらない財産目録に、自書またはパソコンにより、遺言書本文に記載する事項が混在している事例
※民法第968条第2項に規定する、自書ではない財産目録を「添付する」とは、文字通り「付け加えること」を意味します。
財産目録は、本文が記載されている用紙とは別の用紙を用いて作成する必要があります。
財産目録を印刷してその余白に本文に該当する文言を自書することは認められません。

 

注意事項
①上記のような補正事例があった場合、申請人は補正をすることになります。
文量によっては、相当程度の時間を要する場合があり、改めて予約を取って出直して頂くこともあるようです。
②保管申請時に、遺言書保管所の遺言書保管官によって、自筆証書遺言の方式についての外形的な確認(全文、日付及び氏名の自署、押印の有無、訂正の方法等)が行われます。
ただし、遺言書の内容については、審査されませんのでご注意ください。